先日の記事はたくさん反響をいただきました。
9/29付けのブックマーク、コメント数ランキングの両方でTOP3にランクインしました。ありがとうございます!
前回は「クセがすごいwww」を言いたかっただけなので、今回はもう少し詳しくいらすとやがなぜここまで浸透しているのかについて、沢山いただいたコメントを引用させて頂きながら、掘り下げて説明して行きたいと思います。
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上記の記事とは違い、オチのない話ですが、お付き合いいただけければ幸いです。
従来型ビジネスモデルとの違い
「いらすとや」のイラストがここまで浸透した理由は
- 無料であること
- 圧倒的なストックがあること
- ライバルが居なかったこと
ここまでは前回説明した通りです。
本来のイラストレーターの仕事というのは、クライアントの依頼に沿ったイラストを描くことです。言ってしまえばそれは「一点モノ」で、描いて納品してしまえば使い回す事ができません。その分クライアントの細かな依頼にまで対応する事ができます。しかし、いらすとやさんは「細かな依頼」を「事前に大量に準備する事」で、使う側の「かゆい所に手が届く」を実現しています。
「いらすとや」がどれだけ画期的なのか現役のデザイナーの立場で説明します – OMGmag
同じタッチ、かつ拒否反応を示す人が少なさそうな絵がたくさんあるというのが強い。1つのプレゼンやポスター内にタッチが違うイラストが混じると一気にダサくなるし、イラストが主張しすぎても使いづらいのよね
そして、いらすとやさんがこれまでのイラストレーターと違う所は「イラストを売るのではなく、浸透させる事で人を集める」ということをやっている点。ここが「画期的」と表現した所以です。
「光学迷彩」のイラスト
ほかのイラストレーターからしてみれば、イラストを大量に無料公開されてしまっては「仕事を奪われた」と感じるのも理解はできます。しかし「いらすとや」のサイト運営はれっきとしたビジネスです。ただ善意でイラストを無料公開している訳ではありません。
サイトの収益構造について
件の記事で、いらすとやさんの主立った売り上げは「LINEスタンプの売上げ」「高解像度イラストの販売」そして「アドセンス広告」という説明をしました。
このアドセンス広告というものを簡単にご説明すると《サイト内に広告を出し、読者がその広告のサイトを訪問すると、いくらか入ってくる》というもの。「サイト内の場所を貸し、看板を出してもらう」といったイメージが分かりやすいかと思います。アドセンス広告は、私を含めたブロガーの収益の柱をなすものです。そしてその収益を上げるために最も重要な事が「サイトの訪問者(PV=ページビュー)を増やす事」です。
たくさん人が来る→訪問者の何%かが広告に興味を持ちサイトに訪問→収益が発生
このような流れになります。当然分母(訪問者)が大きくなるにつれ収益は増加していきます。この原則に当てはめると、いらすとやさんの戦略は非常に理にかなっていると言えます。
- クセの無いイラストである→どんな場面でも使いやすくたくさんの人にリーチしている
- 無料である→数多く拡散させることで有名になる
- 話題になったニュースをすぐにイラストにしてアップする→話のネタにしてもらえる
このようにサイトに何度も訪れてもらう事を目的とした戦略が練られています。ぼくは「いらすとや」さんが月にどれくらいのPVがあるかは存じ上げておりませんが、『日本中がいらすとやだらけ』になっている現状を鑑みると「ものすごい数」であることは容易に想像できます。
それで一体いくら稼いでるんやろ?というような話はここでは言及しません。
(実際分からないですしね。)
露出を増やす=ファンが増える
さて、大量のイラストを準備し、無料で公開。そして多くの訪問者を獲得したいらすとやさん。露出が増えるにつれ、ファンも増加して行きます。かわいいイラストですから人気も当然出ますよね。「いらすとや」はイラストレーターのみふねたかしさんが運営されています。
「いらすとや」がどれだけ画期的なのか現役のデザイナーの立場で説明します – OMGmag
結局のところ「クオリティが高い」これに尽きる。あれはものすごい絵のうまい人が色々削ぎ落として個性を残しつつ極限までシンプルにした絵なんだよなー。バネのイラストなんか超うまい
みふねたかしさんのHPがこちらです。作品がたくさん掲載されています。
どうでしょう。非常にクオリティが高いですよね!
「いらすとや」のファンにも受け入れられるし、今度はいらすとやを入り口にして、みふねさんご自身のファンも獲得できます。無料の素材が本来のイラストレーターの仕事にも良い影響を与えている事は間違いないでしょう。
無料素材で間口を広げてコアなファンを獲得し、
本来のイラストレーターの仕事につなげる。
この流れがすごく上手い。みふねさんは無料素材と本来の有料の仕事の両方を有機的にMIXさせてブランディングを構築しています。
画期的と言わざるを得ません。
マネする事の難しさ
では仕事を奪われてしまったイラストレーターさんもマネしたらいいんじゃない?と思われる方もいるかと思います。
「いらすとや」がどれだけ画期的なのか現役のデザイナーの立場で説明します – OMGmag
二、三匹はドジョウがいそうだが、ブログなんかよりも描き続けるコストが高いよな。
毎日のようにイラストを書いて継続してアップしつづける。これは並大抵の事ではありません。そしてここまで大量の素材をストックした今でも描き続けていらっしゃるし、開設当初はおそらくアクセスもなく、ひたすら描き続けてはアップする日々だったのではないでしょうか。これを今から始めることが出来る人がどれくらい居るでしょうか。
もっとも今もコツコツと第二のいらすとやを目指しているイラストレーターも居るかもしれませんし。どちらにせよ非常にコストが高いです。
時間をかけたコンテンツは簡単にはマネできない。
これはぼくの持論です。考えて行動し、時間をかけて積み上げる。
時間をかけて磨き上げたものは付け焼き刃では壊せません。
いやすとやだらけの現状は必然
今の現状は、ここまでコツコツを作業しストックしてきたみふねさんの努力と、こういう時代が来ると見越していた先見の明だと思っています。ですので個人的には「仕事を奪われた」という意見には全く賛同する事はできません。
ぼくはデザイナーで、クリエイターのはしくれです。ぼくはいらすとやさんや、その他の無料で素材を提供してくれるクリエイター、webサイトに対して最大級のリスペクトをしています。
自分の作った作品を自由につかっていいよ。商用もOKですよ!と快く利用させてくれる。これは作り手としてはなかなか言えないんですよね。ぼくがまだまだ未熟だからです。
しかしそうした心の広いクリエイターのおかげですごく便利になっています!とてもありがたい事ですし、そういう心の広いクリエイターこそ、たくさん儲かるべきだと考えています。なので、仕事を奪われた!なんて文句を言う前に、腕を磨いて良いモノ作りましょうよ!
それでは今回はこの辺で
さようなら。
コメント
コメント一覧 (1件)
はじめまして。
『いらすとや』で検索したら上位に記事が出てきたので読ませていただきました。
自分は医療系の仕事をしておりますが
『いらすとや』の素材は医療系が多いのも魅力のひとつです。
あのタッチで豊富な医療系で使わない人はいないかもしれません。
自分も名刺、スライド等大活用させていただております。
無料で使わせてくれるみふねさんに感謝です。
ドネーションがあればぜひしたいと思ってるくらいです。